ヴァート

2004年4月27日 読書
 これは愛の物語だ。とっくに分かってるって?
 おれは長いこと、そうとは知らなかった。自分が、みんなに愛されてるって。


妹がいて羽さえあれば、この世は最高だぜ!
そこばくと病み気味なこのオビはなんなのか(笑)まあ、当たってるけど(爆)
これはサイバーパンクというのかしら? あまり機械チックなものが出てこないけど、なんだかファンタジーぽくも感じたよ。
ゲーム描写のせいかもしれないけど。

 〜砕いていえばこういう事。現実世界で一定の価値のあるものはなんでも、仮想現実の世界において同等プラス・マイナス0.267125の価値をもつもののみと交換可能である。そうとも、子ネコ諸君、重量や体積や表面積などはまったく関係ない。あくまでも、価値だ。失ったものがどれほど大切なものか、問題は、その総括的な価値だ。ふたたび入れ替えるには、合計でその価値に見合うものを用意するしかない。

主人公はヴァートで最愛の妹を失った青年。通称スクリブル。
少女の名はデズデモーナ。彼の実の妹にして恋人。
いきなり濃ゆいな。
スクリブルは仲間と共に、妹を取り戻す為に、ヴァートを求めて彷徨う。

このヴァートの定義がすごく掴みずらかったんですけど!
鳥の羽のように見えるものを喉の奥につっこんで、それで粘膜をなでると摂取できるらしい。コードで繋ぐわけでもないのに、その場で仲間と同じ場所にトリップできる。
麻薬でゲーム・ソフトでヴァーチャル・リアリティ? 多分そんな感じだ。

青い羽は合法、黒い羽は非合法、ピンクの羽はポルノ、黄色の羽は最高級品。金を出しただけじゃ手に入らない。ブラック・カードみたいなもんか?←違いそう
でも欧米でポルノって言ったらブルーじゃないのか? ピンク=エロて日本独自の文化かと思ってた。どっちかっていうと、ベビー・ピンクつって子供向けの色の認識じゃなかったっけ外国では? 実際、心理学的にもピンク色が与えるのは安心感だし。
ちなみに「管理者用」が銀色。この世に一枚しかない。

ヴァズの定義もよく分からない。エンジンから、髪から、セックス時まで、色々な物にぬりたくる。おそらくジェル状で、潤滑剤とか興奮剤とか色々な物が入ってたりするらしい。無機有機問わず使ってるので、どちらにも使用できるか、あるいは多くの種別がある。

「あたしは、むこうへ行きたいのよ、スクリブル。いっしょに来てほしい。来てくれるでしょ?」

知識は悦楽、知識は桎梏。
知識を求めて、イングリッシュ・ブードゥーの底の底へ。過去の思い出の中に、ソレがあるらしいヨ。
メタ・ヴァート「キュリアス・イエロー」で妹はヴァート世界へ行ったまま。引き換えにアメーバみたいなヴァート生物を手に入れる。←いらねー!
これって等価交換(黙れ、ヲタ)
なぜ黄色なんだろう? 日本じゃむしろ狂気の色っぽい。黄色い救急車とか。ってよく知らんけど。
管理者羽に対して「黄金」ではないんだよね。

「しかたないんだ、デズ。どうすることもできない。おれはそれほどきみを愛してる。というか、きみはそれほどおれを愛してないから」

お願いです、神様。僕は悪いことなんかしていません。
たぶん、幼いスティーブンはベッドの中でこうして神様に祈った事だろう。父親が理不尽な暴力をふるうたび。
この物語には初めから母親が欠けていて、作中でも一切言及されていない。彼は妹にそれを求めようとしていた? だとしたらそれは、あまり恋じゃないかもしれない。同士のような、共犯者のような…うーん上手くいえないわ。
母性の象徴というか対応するのがクイーン・ホバートかな。

「きみは真実を知っているんだ、デズ。信じつづけろ。いつまでも、おれのことを考えていてくれ」

Four is DOOR.
Five is LIVE.
昔、ネクラでイヤミなイギリス人が、黒い服を着てパンクを産んだそうな(違)。
その意味ではサイバーパンクの空気を一番表せてるのかもこの作者は。マンチェスター生まれのギタリスト兼劇作家兼画家であるからして。←悪いけどうさんくさー(笑)
God save THE QUEEN.

 思うに、おれのデズデモーナに対する愛情は、最初からデズデモーナがおれを愛する以上に強かった。だからこそ、デズデモーナがこの世界にとどまったことを裏切りと思ったのだ。一生の裏切りと。

メチャクチャに見えて、実はあちこちに伏線があったりするんだよね。
一度読んだだけじゃとても全体像を掴めないけど(私がアホだから?)、何度も読み返すと色々分かる事があってビビる。同じ台詞が違う場面で繰り返されたりとか、私好みよ。意外にこの人、色々計算してるんだわ(爆)?←無礼

「これはほんものの世界じゃないんだ、デズ。現実の世界は美しくはない。でも、そこがおまえの場所だ。いや、わかろうとする必要はない。おれのいってることを信じればいい。おれはおまえを現実の世界に帰すつもりだよ、デズ。できるかどうかわからないけどね」

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