「このわたくしが醜く老いさらばえるなど、とても承服し兼ねる。いっそ一思いにこの首切っておくれ」
「公主様、どうかそれはお許し下さい。将軍の下に御くだりになれば、必ずや生きてこの城を出られましょうほどに」
「貴様、このわたくしに頭を下げよと申すのか? あのように下賎な者達に辱められよと?」
「めっそうもございません」
「わたくしの美しさがどのように利用されるか、考えた事があるかえ? どこぞの大将の戦利品として下賜され、あれが都に名高い月花の姫よと貶められるのなぞ、わたくしは御免じゃ。洗練された殿上人とは雲泥の田舎侍の下で、細々と慰み者として老いてゆくならば死んだ方がいくらかマシというものよ」
「どうか、どうか御考え直し下さいませ」
「今わたくしが死ねば、わたくしの姿は永遠に美しいまま人々に語り継がれるであろ」
「畏れながら公主の御容顔は御歳を召しましても…」
「花は咲き誇らなければ花ではない!」
「公主様……」
「実を結んだ花を花とは呼ばぬ。芽吹いたばかりのそれを花とは呼ばぬ。枯れたものを、花とは呼ばぬであろ?」
「それでも私は、公主様には生きていて欲しいのです!」
「黙れ! 小者が、浮薄な物言いをするでない! 貴様の浅慮は無用じゃ!」
 
このお方は自分が美しいという信念を貫いて死のうとしているのでございますよ(笑)
彼女にとっては、美しい自分が最高。永遠に美しいのが最高。自分万歳。
醜い自分など考えられないのです。誰かより劣ってしまう自分など許容できないのです。
若さと美しさが価値。ウフ。

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