ストレイト・ストーリーは、十年前絶縁した兄に会う為、時速8キロのトラクターに乗って、アイオワからウィスコンシンまで旅をするロード・ムービー。
距離感が掴めません?
とりあえず、一ヶ月以上はかかってる。
大草原の小さな森を読んでて、ウィスコンシンの森を出てローラが州を横切ったりすると、一ヶ月くらいはかかってたもん。たしか。

実は公開当初、CMに監督の名前が一切出なかったんですよね。
私もデビッド・リンチが撮った映画なんだから、お爺さんが途中で散々な目に遭うのかなーとか思ったんですが(爆)
やっぱ、名前出すのは販売戦略的にマズイって思ったんでしょうねえ。
デビッド・リンチと言えば、その隣に「鬼才」とあだ名されるような監督で。エレファント・マンとか、ツインピークス撮った人。

奇形児のみならず、精神病者を見世物として一般人に公開してたりしますよ、昔のヨーロッパは。究極の道化でしょうね。彼らには羞恥心がない。まったく、どういうツラの皮だよ。

ピエロとか子供の頃から嫌いだったんだよね。
「なんでみんな笑うの? 笑ったらかわいそうでしょ?!」
そんな思考回路の子供の方こそ可哀想な気がしますが気のせいですか。
むしろ営業妨害ですか(笑)

いや、そうでなく。

そのストレイト・ストーリーで良かったシーンは。
自転車レースに参加してる若者の一団に行き会ったお爺さんが「年を取って最悪な事は?」って聞かれるんですよ。そんで、
「若い頃を覚えている事だ」
って答えるんです。
一瞬顔が強張る若者達。ひー

若い頃の思い出って、年をとった頃には宝物のような、今日を生きる糧になるような、大事に思える物だと思ってたのにー!(><;;←希望持ちすぎ?

それとも、若い頃の愚行を忘れられなくて恥かしいって事かな〜?
「みんな忘れたがる」って言ってたし。
そういう事なら四半世紀も生きてない私でも身に覚えがあるよ〜

子供の頃の恥って、なかなか忘れられない。
自分で笑い飛ばせるようになるまで、十年くらいかかったり(−−;;
嫌な思い出ってのは、なんでこう忘れ難いのかしら…
なるだけ思い出さないようにして、ニューロンが繋がらないようにしてるんだけど、やっぱ思い出しちゃうよ〜どうしようもないのにさ〜ハハン。
まあ、二度とあんな事しない決意を助ける反面教師と思って!

で、肝心の一番良かったシーンですが。
兄が住んでる、小さな家に、ようやくたどり着くんです。
色々あったんですけど、ほんとにようやく。
家が近づいてきたら、度胸つける為に、ず〜っとしてた禁酒を破ってビール飲んだり。
その気持ち分かるわ! スッゴク分かる! 酒で何も分からなくなりたいんだよね! 私もそう思ったもん! 18才の頃。←何ー?!

「ライルー!」
って呼ばわりはんのやね。
そしたらしばらくして、中から
「アルヴィーン!」
て応えが。
そんで、アメリカでよく見る網戸付きの二重扉を開けて、ヨボヨボのお爺さんがポーチに出てくるわけですよ!
主人公だって二本も杖を突いてるような状態なんですけれども、お兄さんもあの、テーブルみたいな、なんて言うんでしょうね。
体重を支えやすい四足の杖、アレを引きずりながら、玄関を出てくるのです。

そんで、「あれ(トラクター)でここまで来たのか」みたいな事を言って、涙ぐんで、2人は全然会話をしないわけですけれども。
それが良いんですね。
下手に美しいセリフなんぞ言われたらあの雰囲気が壊れる。

なんだろう…私、小説とか好きで書いてる癖に、最終的には言葉を信じてないんじゃなかろうかと最近思ったり。
本当に大事な物は言葉にできないとか思っていて。
それで、でも、だからこそ、言葉にできない物を少しでも言葉にしたいのかなーとか。

音楽も良かったし。
でも、旅の途中が痛ましいんだよー
主人公が、必死って程でもないんだけど、ただひたすら直向(ひたむき)にライルを目指すのがー
自尊心を傷つける旅だって自分で言ってたし、他人の運転する車に乗りたくないって言ってたけど、旅自体が猶予期間であったような気がする。
お兄さんに会うための心の整理をする時間で、距離と共に心をお兄さんに近づける為の時間。

だから、電車とか車でパーっと突っ走る、て訳にはいかなかったんじゃないかなあ。
ゆっくり、自分の手で確かめながら進んでいきたかったんじゃないのかなあ。
人がなんと言おうとも、お爺さんの心は時速8キロだったんだよ。

うむーロードムービーみたいな話も書いてみたくなったなあ!

 
グッド・ウィル・ハンティングの良かったシーンですが。
これもまた最初にあらすじ説明しますか。
不世出の超天才児ウィル・ハンティングは、仲間と共にセコイ犯罪を繰り返していたが、その才を見出され(後略)。

ロビン・ウィリアムズが精神分析医役で出るんだけど、クレジットでも中頃に表示されて、全然大物振りを売りにしてないので好感。
でも、相当重要な役所なんですけどね〜
与えられなかった父性愛を…ってまあいいか。
ロビンには、大学時代からの友達がいて、彼もまたトラウマを抱えてるっぽいです。
友達は数学オリンピック(←なんと実在しますよ)みたいなのでメダルを取って、名誉と地位を得たんですが、自分より頭のいいロビンが精神分析医なんかになっちゃって、日の目を見ないでいる事になんとはなしに後ろめたさとか、未だに嫉妬とか、色々グルグルしているのです。
そんで、「お前は僕の成功を羨んでいるんだろう?! だから彼が自分と同じ敗残者になるように導いているんだ!」とかナントカ因縁をつけたりします(笑)
これは心理学的に言う「リバース」とか言う奴ですか。違いますか。
ヒステリーとか、被害妄想? そうですか。
私の見た所、このおじさん2人の関係は、マットとベンを投影してるんじゃないでしょうか。うーむ。

才能を持っていたら、それを生かす分野につくのが当たり前だ、そういう考え方をするのは、自分がその価値観の中で生きてきたからしょうがない事なんでしょうか…
天才的な音感を持っていても、本人が音楽に関わりたくないと言えば、やはりそこは本人の主張を…と思ったりもするけど、やっぱもったいないですねえ。
美人が皆モデルになるかっつったらそうでもないし、すごく力持ちの人が必ず重量挙げ選手になるわけでもない。
趣味嗜好と才能が、一致してればこれほどいい事はないんでしょうけど。

マット・ディモンとベン・アフレックの共同執筆による脚本だそうで。
「It’s not your fault」
を十回繰り替えすロビン。
「知ってるよ」「分かってるって」と言いながらも、やがて泣き出して、目の前の肩にすがりつくマット。
頭では父親が悪いと知ってても、ずっとずっと自分を否定してきた天才にとって本当に必要な言葉だったのでしょう。

後は思考力も判断力も卓越した彼の事。
自分1人でじっくり考え、就職内定を蹴り、自己卑下の余り突き放した彼女の元へひた走ります。
21歳、アメリカでの成人の誕生日に、悪友達がプレゼントしてくれたオンボロ・カスタム・カーに乗って。

ある朝、親友であるベン・アフレックがマットを迎えに行くと、応答がありません。
窓から覗いてみると、家の中は薄暗いまま。
彼は始め呆然として、肩頬で笑い、遠いな目をして、寂しげに微笑み、ため息を吐き、肩を竦めます。
彼は知ったのです。「その時」が来た事を。

なんつーのかなーこの辺の演技が、超絶最高ですよ。
即帰れ、マット! と思ってしまうほど。
文章でこの空気感を表すのは難しいな。

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